
M 〜自分の身を滅ぼすほど、あなたを愛しました〜
あなたとの出会いが、僕の人生をカラフルで
エネルギーに満ちたものにしてくれた。
あなたがいてくれたからこそ、
何度も危機を乗り越えることができた。
でも…
お別れの時は刻一刻と近づいてくる。
ハワイへの旅は、あなたとの決別の旅でもある。
今まで本当にありがとう。
モンスターエナジー…。
◆序章 Mとの出会い
あなたと初めて会ったのは、あるクラブのバーでのこと。
当時、レッドブルにぞっこんだった僕は、
「チャラチャラしたやつだな」
くらいのイメージでしかなかった。
その後、近所のコンビニで思わぬ再会があり、
「一度くらい過ちがあっても良いかな」と、
ほんの軽い気持ちで試してみたのが、恋の始まりだった。
それからと言うものの、僕らは毎日のように逢瀬を重ねた。
特に仕事が忙しく、もうひと踏ん張りって時に、
いつも元気づけてくれた。
一生この関係が続けばいい。
心からそう願っていた。
◆第1章 Mへの想い
「お前、あいつからちょっと距離をおいた方がいいんじゃないか?」
友人からの思いがけぬひと言。
ひょっとして、僕たちがあまりに仲良いものだから嫉妬してるのか?
取りつく島もない僕を見かねたのか、
友人は、一冊の雑誌を置いて去って行った。
彼が置いて行った雑誌のページをパラパラとめくっていると、
にわかには信じがたい言葉が目に入ってきた。
“エナジードリンクによる健康リスク”
信じられない…。
いや、信じたくなかったのかもしれない。
思い返せば、ここのところ倦怠期が続いていたような気がする。
だんだんと関係がギクシャクしだしてきて、
とうとう僕は別れを決意することになる。
◆第2章 Mとの別れ
「この旅行でお別れしよう」
そう固く誓った僕は、ハワイの地で
最後の想い出を作ろうと、
極力、明るく振る舞うように心がけた。
甘くて濃厚な『MANGO LOCO』
なめらかな舌触り、ふわっと水々しい香り。
何度も確かめるようにして、味わい尽くした。
情熱的で、はちきれんばかりの『PACIFIC PUNCH』
真っ白な出で立ちから想像できないけど、
中は真っ赤な装いで、僕の視覚を刺激する。
大人の雰囲気に、あどけなさがちょっぴり残る『GINGER BREW』
ぎゅっと濃縮された香りが、口の中にふわっと広がり、
いつまでも余韻を楽しんでいられる。
華やかで存在感たっぷりな『ULTRA PARADISE』
個性が強く扱いにくいかと思ったけど、
いつの間にか、その魅力の虜になる。
妖麗な魅力で僕の心を弄ぶ『ULTRA VIOLET』
極限の甘美に酔いしれる時もあるし、
ネコのように気まぐれで、捕まえてもスルリと逃げていく。
出会いがあれば別れがある。
後ろ髪を引かれつつも、僕は帰国の途についた。
たくさんの素敵な想い出をありがとう…。
◆終章 Mとの再会
あなたのいない生活になってから1週間が経ち、
僕の心にはポッカリ穴が空いたよう。
気がつけば、ついあなたの姿を探してしまう。
向かいのホーム。路地裏の窓。
こんなところにいるはずもないのに…。
ある日の出来事。
僕がオフィスのデスクに座ると、
そこには信じられない光景が!
なぜ…ここに?
頭の中が疑問でぐるぐるしているなかで、
一枚の置手紙が添えてあった。
「年末の冷蔵庫棚おろしで出てきました。
良かったらあめ坊主さんどうぞ♪」
『PIPELINE PUNCH』が、日本から姿を消したのが約半年前。
半年間も、寒くて薄暗い冷蔵庫の中で、
僕をずっと待っていてくれてたなんて…。
彼女の一途な想いに、僕の気持ちは完全に吹っ切れた。
もう決して迷うことはないだろう。
来る者を拒まず、去る者は追いかけるモンスター。
あなたを永遠に愛し続けます。
文系フリーランス。Webメディアのディレクション/コンサル/SNS運用/ライターなどをやってます。 経験したことがないことは、何でもやってみたい。好奇心旺盛なさすらいのスナフキン。にわかサウナーやってます。フィンランドLOVE
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